国営放送が開催したイムンドゥスとの戦いが終わった後。ミルドレッド達はケフィの治療をテンパランス達に託し、ケフィのいない生活を送っていた。
呪殺の仕事やお払いの仕事をこなしながら、お守りのぬいぐるみを黙々と作り続ける。
「ケフィ、まだ治らないのかな」
ニナがポツリとこぼした。皆、この数日間あえて話題に出さなかったケフィの話。沈黙が続いたことで、ニナは触れてはいけない話題だったことに気付いた。
「あ、ごめん。でも、気にならない?もう起きても大丈夫になったのかなーとか、どんな暮らししてるのかなーとか」
エラが堪らずそれに答えた。
「テンパランスさんから連絡がないんだから知らないわよ」
そして再び沈黙が訪れる。ここ数日、いつもこんな感じだ。必要最低限の会話しかせず、一言話せば沈黙。お喋りなニナにはこのお通夜のような沈黙が耐えられなかった。ついにニナは皆が触れようとしなかった話題に踏み込んでしまう。
「ケフィがあんなことになるきっかけってなんだったっけ?」
一瞬にして空気が凍り付いた。ヒリヒリとした空気が張り詰める。
「ニナがベルを押したから、ケフィがそれを庇ったんでしょ」
エラがいつにも増して厳しい目をニナに向ける。ニナは引き攣った笑いとともに弁解した。
「あたしが悪かったっていうの?エラも一緒にベルを責めてたじゃん!元はと言えばベルがちゃんと戦ってたらあんなことになって無くない?」
「私も戦ってました……。あなたたちは見えてなかったようだけど」
ベルが小さな声で抗議する。ミルドレッドはベルを擁護した。
「ベルもちゃんと戦ってたわよ。クストスやアマーレを呼んで補佐していたわ」
「はあー?!私記憶にないんですけど?記憶にあったらベルを褒めてますよ?!」
ニナは自分が戦犯にされるのは我慢ならないと、ベルを徹底的に責める態度をとった。ニナはエラも乗ってくれると期待していた。しかしエラは自分にも非があると認めていたため、ベルを一方的に責める気にはなれない。
「ベルも悪かったけど、あたしたちも悪かったのよ」
ミルドレッドが仲裁しようとエラの言葉に続けた。
「あたしたちみんな悪かったのよ。本気出さなかったベルも悪かったし、それを責めて喧嘩したあなた達二人も悪かった。それを野放しにしたあたしも悪かったのよ。ケフィがそれを全部庇ったの。はい、おしまい。仕事なさい」
「私も戦ってたのに……最終的に倒したのは私なのに……」
ベルがブツブツ自己弁護をこぼしていると、カッとなったニナの神経に障った。
「じゃあ最初からあれをやればよかったじゃないさあベル?!あんな力があるならサクっと決着ついてたじゃない!なんで出し惜しみしてたの?いやらしいやつだねえ?!」
ニナがまくしたてると、エラもそれに口を出した。
「そうよね。ベル全然力衰えてなかったじゃない。なんで力封印してたのよ?本当に今まで力が使えなかったの?補助言霊は使えたんでしょう?」
ミルドレッドもそれに合わせて疑問を口にした。
「ベル、あれは何語なの?あなたいつからあんな言霊が使えたの?最初からずっと手加減してたってことよね?何かあったの?」
「使えない理由があったんです……。使いたくなかったんです……」
消え入りそうなベルの自己弁護。それに矢継ぎ早に浴びせられる疑問、非難、口撃……。
プツン。と、ベルの堪忍袋の緒が切れた。
「みんな、気易く言わないで!!私は力が強すぎるから!!だから使えなかったのよ!!使いたくなかったの!!私は人を不幸にしかしないから!!」
ベルの突然の怒声に三人は固まった。ベルがこんな大声を出したところは見たことがない。ベルは完全に切れてしまったようだった。
「自分の力に慢心した愚者にはなりたくなかった!エラ、貴女のことよ!貴女みたいに自分の力に溺れて能力を振りかざし、屍山血河を築き続けるぐらいなら、私は能力のコントロール方法をミルドレッド様から学ぼうと思った!日々の家事を続けることで精神を鍛錬して、言霊の選択の仕方をはじめから習得しなおそうと思ったのよ!だから言霊が使えなかったの、使いたくなかったのよ!!」
あのおとなしく蚊の鳴くような声でしか話さなかったベルがやけに饒舌にまくしたてる。エラとニナには理解が追い付かない。
「エラ、ニナ、貴女達に何されても無抵抗だったのも、修行の一環だと思ったわ。これは私が背負った業。当然の報いだと思って耐えてきた。でもそれがケフィさんを結果的に不幸にした。どう足掻いても私の言霊は人を不幸にするのだわ。もういい、もう沢山!私だって忍辱負重に日々を過ごしていたわけでは無いわ。貴女達が言霊を饒舌に語る私を歓迎するのならば、良いわよ、見せてあげるわ、貴女達の身をもって言霊使いベル・フォーチュネットの真の実力を思い知るがいいわ!」
するとベルは凛としたハッキリとした口調で異国語の言霊を紡ぎだした。三人には聞いたことのない言語だ。確かあの時、言霊の怪物を呼んだ時もこんな言葉を紡いでいた。
エラが手にしていた縫い針が、エラの指に刺さった。
「痛い!……何?」
今度は、糸切鋏がふわりと持ち上がり、ニナの眉間を狙って飛んできた。
「あづっ!!……ひいい!何?!」
それが合図だった。ベルが言霊を書き記していた、ぬいぐるみ用の巻紙が一斉に言霊の力を発揮した。窓を破って石礫が三人めがけて飛んでくる。部屋の奥で蛇口から水が勢いよく噴き出す音がする。鋏が飛び交い、三人を切り刻む。カーテンが燃え始める。ミルドレッドの屋敷は大混乱に襲われた。
「ベル、ベル、これは何の言霊なの?!やめなさい!!」
ミルドレッドの制止の声に、ベルは高笑いを上げた。
「古の古霊ヴィンディクタエですわ!貴女達が私の言霊を見たいというから、せっかくだから積年の恨みを晴らします。何をしても私の言霊は止められない。貴女達の業が清算されるまでこの言霊はあなたたちに復讐し続ける!!」
すると、床下の配管から水が噴き出し、床を突き破って部屋中を水浸しにした。
「水の古霊アクアよ、静まり給え!炎の古霊フランマよ、怒りを鎮め給え!!」
ミルドレッドが氾濫する古霊の力を鎮めようと古霊たちに語り掛ける。が、しかし。
「ヴィンディクタエの力はすべて蓄えられた業によるものよ。つまりこれだけのことを貴女達は私にしてきたの。呪うなら己が業を呪いなさいな」
ベルに汚水をかけて虐めたこと、針や鋏で傷つけたこと、殴る蹴るの暴行、首を絞めたこと、水責めにして殺しかけたこと、焼けた炭を押し付けたこと、煙草をベル目掛けて投げたこと……。数々の所業がすべてエラ、ニナ、ミルドレッドに降りかかる。
「くっ……調子に乗るんじゃないわよ!」
ニナが反撃の言霊を練る。
「憎しみの古霊オディウムよ、ベルの力を憎め、言霊を紡ぐ口を塞げ!」
しかし、言葉を奪われたのはニナのほうだった。
「……!……?……!……!!」
「駄目よ、ニナ!全部反撃されてるのよ!私たちは耐えるしかないの!」
「冗談じゃないわよ、ベル!師匠であるあたしまで貴女に何かしたっていうの?」
ミルドレッドはニナとエラを連れて部屋を出、ベルを部屋に閉じ込めた。
「無駄ですから」
すると勢いよく扉が開き、三人は互いの頭をぶつけ合いながら将棋倒しに倒れた。
いつの間にかベルが薄笑いを浮かべて三人を見下ろしている。
「に、逃げるわよ!!」
しかし部屋のどこへ逃れても家具や道具がおびただしく襲い掛かってくる。固く重い家具達が襲い来る様は、まるで殴る蹴るの暴行のように三人を攻め立てる。扉が勝手に開閉し、あちこちに火の手が上がり、水は吹きだし、物が飛び交い、三人はボロボロに負傷し続けた。
「あんたたち、ちょっとベルを引き付けておいて!この言霊を封印する!」
ミルドレッドは家具たちの攻撃の手をかいくぐり、自室に逃げ込んだ。自室でもソファーが踊り、書類が舞い上がり、混沌を極めていたが。
「あった!ペン、インク、白い紙!うう、こんな中で書けるかしら」
ミルドレッドは紙に幾何学模様と言霊を書き、怪我した個所から血を採取して擦り付けた。四隅にテープを張り付け、ベルのもとへと走り出す。
「ベル!」
ベルは自室にいた。自室で三人が言霊に苦しめられているのを見物していた。
「ここにいたのね。ちょうどよかったわ」
「どうかなさいました、ミルドレッド様?」
「しばらくここにいなさい!」
ミルドレッドはドアを閉めると、そこに先ほどの幾何学模様の紙を貼り付けた。
「古の古霊よ、我ここに汝を封じる!ベルとともに封印されよ!」
するとドスンバタンと暴れていた家具は動きを止め、ベルの部屋が赤黒い光に包まれた。
「そんな……!これは魔術?!言霊を使った魔術ですか?!」
勘のいいベルは自分の置かれた状況をすぐに把握した。押しても引いてもドアが開かない。
「くっ……!やられた。でも、この封印が解けたらヴィンディクタエは必ず復讐を始めますからね。私の生死に関わらず……!」
「あなたを殺しはしないわ。水と食料はドアに穴をあけて提供する。少しの間おとなしくなさい」
そこへ、ちょうどガイがやってきた。
「な……なあんだあ、こりゃあ?ミルドレッド、これはどうしたんだよ?」
「ガイ!丁度良かった!ノコギリでドアに穴をあけてちょうだい!」
ベルは苦々しく唇をかみしめた。
「情けをかけるつもりなの……?やるなら徹底的にしたらどう?私の復讐は止められないわよ」
呪殺の仕事やお払いの仕事をこなしながら、お守りのぬいぐるみを黙々と作り続ける。
「ケフィ、まだ治らないのかな」
ニナがポツリとこぼした。皆、この数日間あえて話題に出さなかったケフィの話。沈黙が続いたことで、ニナは触れてはいけない話題だったことに気付いた。
「あ、ごめん。でも、気にならない?もう起きても大丈夫になったのかなーとか、どんな暮らししてるのかなーとか」
エラが堪らずそれに答えた。
「テンパランスさんから連絡がないんだから知らないわよ」
そして再び沈黙が訪れる。ここ数日、いつもこんな感じだ。必要最低限の会話しかせず、一言話せば沈黙。お喋りなニナにはこのお通夜のような沈黙が耐えられなかった。ついにニナは皆が触れようとしなかった話題に踏み込んでしまう。
「ケフィがあんなことになるきっかけってなんだったっけ?」
一瞬にして空気が凍り付いた。ヒリヒリとした空気が張り詰める。
「ニナがベルを押したから、ケフィがそれを庇ったんでしょ」
エラがいつにも増して厳しい目をニナに向ける。ニナは引き攣った笑いとともに弁解した。
「あたしが悪かったっていうの?エラも一緒にベルを責めてたじゃん!元はと言えばベルがちゃんと戦ってたらあんなことになって無くない?」
「私も戦ってました……。あなたたちは見えてなかったようだけど」
ベルが小さな声で抗議する。ミルドレッドはベルを擁護した。
「ベルもちゃんと戦ってたわよ。クストスやアマーレを呼んで補佐していたわ」
「はあー?!私記憶にないんですけど?記憶にあったらベルを褒めてますよ?!」
ニナは自分が戦犯にされるのは我慢ならないと、ベルを徹底的に責める態度をとった。ニナはエラも乗ってくれると期待していた。しかしエラは自分にも非があると認めていたため、ベルを一方的に責める気にはなれない。
「ベルも悪かったけど、あたしたちも悪かったのよ」
ミルドレッドが仲裁しようとエラの言葉に続けた。
「あたしたちみんな悪かったのよ。本気出さなかったベルも悪かったし、それを責めて喧嘩したあなた達二人も悪かった。それを野放しにしたあたしも悪かったのよ。ケフィがそれを全部庇ったの。はい、おしまい。仕事なさい」
「私も戦ってたのに……最終的に倒したのは私なのに……」
ベルがブツブツ自己弁護をこぼしていると、カッとなったニナの神経に障った。
「じゃあ最初からあれをやればよかったじゃないさあベル?!あんな力があるならサクっと決着ついてたじゃない!なんで出し惜しみしてたの?いやらしいやつだねえ?!」
ニナがまくしたてると、エラもそれに口を出した。
「そうよね。ベル全然力衰えてなかったじゃない。なんで力封印してたのよ?本当に今まで力が使えなかったの?補助言霊は使えたんでしょう?」
ミルドレッドもそれに合わせて疑問を口にした。
「ベル、あれは何語なの?あなたいつからあんな言霊が使えたの?最初からずっと手加減してたってことよね?何かあったの?」
「使えない理由があったんです……。使いたくなかったんです……」
消え入りそうなベルの自己弁護。それに矢継ぎ早に浴びせられる疑問、非難、口撃……。
プツン。と、ベルの堪忍袋の緒が切れた。
「みんな、気易く言わないで!!私は力が強すぎるから!!だから使えなかったのよ!!使いたくなかったの!!私は人を不幸にしかしないから!!」
ベルの突然の怒声に三人は固まった。ベルがこんな大声を出したところは見たことがない。ベルは完全に切れてしまったようだった。
「自分の力に慢心した愚者にはなりたくなかった!エラ、貴女のことよ!貴女みたいに自分の力に溺れて能力を振りかざし、屍山血河を築き続けるぐらいなら、私は能力のコントロール方法をミルドレッド様から学ぼうと思った!日々の家事を続けることで精神を鍛錬して、言霊の選択の仕方をはじめから習得しなおそうと思ったのよ!だから言霊が使えなかったの、使いたくなかったのよ!!」
あのおとなしく蚊の鳴くような声でしか話さなかったベルがやけに饒舌にまくしたてる。エラとニナには理解が追い付かない。
「エラ、ニナ、貴女達に何されても無抵抗だったのも、修行の一環だと思ったわ。これは私が背負った業。当然の報いだと思って耐えてきた。でもそれがケフィさんを結果的に不幸にした。どう足掻いても私の言霊は人を不幸にするのだわ。もういい、もう沢山!私だって忍辱負重に日々を過ごしていたわけでは無いわ。貴女達が言霊を饒舌に語る私を歓迎するのならば、良いわよ、見せてあげるわ、貴女達の身をもって言霊使いベル・フォーチュネットの真の実力を思い知るがいいわ!」
するとベルは凛としたハッキリとした口調で異国語の言霊を紡ぎだした。三人には聞いたことのない言語だ。確かあの時、言霊の怪物を呼んだ時もこんな言葉を紡いでいた。
エラが手にしていた縫い針が、エラの指に刺さった。
「痛い!……何?」
今度は、糸切鋏がふわりと持ち上がり、ニナの眉間を狙って飛んできた。
「あづっ!!……ひいい!何?!」
それが合図だった。ベルが言霊を書き記していた、ぬいぐるみ用の巻紙が一斉に言霊の力を発揮した。窓を破って石礫が三人めがけて飛んでくる。部屋の奥で蛇口から水が勢いよく噴き出す音がする。鋏が飛び交い、三人を切り刻む。カーテンが燃え始める。ミルドレッドの屋敷は大混乱に襲われた。
「ベル、ベル、これは何の言霊なの?!やめなさい!!」
ミルドレッドの制止の声に、ベルは高笑いを上げた。
「古の古霊ヴィンディクタエですわ!貴女達が私の言霊を見たいというから、せっかくだから積年の恨みを晴らします。何をしても私の言霊は止められない。貴女達の業が清算されるまでこの言霊はあなたたちに復讐し続ける!!」
すると、床下の配管から水が噴き出し、床を突き破って部屋中を水浸しにした。
「水の古霊アクアよ、静まり給え!炎の古霊フランマよ、怒りを鎮め給え!!」
ミルドレッドが氾濫する古霊の力を鎮めようと古霊たちに語り掛ける。が、しかし。
「ヴィンディクタエの力はすべて蓄えられた業によるものよ。つまりこれだけのことを貴女達は私にしてきたの。呪うなら己が業を呪いなさいな」
ベルに汚水をかけて虐めたこと、針や鋏で傷つけたこと、殴る蹴るの暴行、首を絞めたこと、水責めにして殺しかけたこと、焼けた炭を押し付けたこと、煙草をベル目掛けて投げたこと……。数々の所業がすべてエラ、ニナ、ミルドレッドに降りかかる。
「くっ……調子に乗るんじゃないわよ!」
ニナが反撃の言霊を練る。
「憎しみの古霊オディウムよ、ベルの力を憎め、言霊を紡ぐ口を塞げ!」
しかし、言葉を奪われたのはニナのほうだった。
「……!……?……!……!!」
「駄目よ、ニナ!全部反撃されてるのよ!私たちは耐えるしかないの!」
「冗談じゃないわよ、ベル!師匠であるあたしまで貴女に何かしたっていうの?」
ミルドレッドはニナとエラを連れて部屋を出、ベルを部屋に閉じ込めた。
「無駄ですから」
すると勢いよく扉が開き、三人は互いの頭をぶつけ合いながら将棋倒しに倒れた。
いつの間にかベルが薄笑いを浮かべて三人を見下ろしている。
「に、逃げるわよ!!」
しかし部屋のどこへ逃れても家具や道具がおびただしく襲い掛かってくる。固く重い家具達が襲い来る様は、まるで殴る蹴るの暴行のように三人を攻め立てる。扉が勝手に開閉し、あちこちに火の手が上がり、水は吹きだし、物が飛び交い、三人はボロボロに負傷し続けた。
「あんたたち、ちょっとベルを引き付けておいて!この言霊を封印する!」
ミルドレッドは家具たちの攻撃の手をかいくぐり、自室に逃げ込んだ。自室でもソファーが踊り、書類が舞い上がり、混沌を極めていたが。
「あった!ペン、インク、白い紙!うう、こんな中で書けるかしら」
ミルドレッドは紙に幾何学模様と言霊を書き、怪我した個所から血を採取して擦り付けた。四隅にテープを張り付け、ベルのもとへと走り出す。
「ベル!」
ベルは自室にいた。自室で三人が言霊に苦しめられているのを見物していた。
「ここにいたのね。ちょうどよかったわ」
「どうかなさいました、ミルドレッド様?」
「しばらくここにいなさい!」
ミルドレッドはドアを閉めると、そこに先ほどの幾何学模様の紙を貼り付けた。
「古の古霊よ、我ここに汝を封じる!ベルとともに封印されよ!」
するとドスンバタンと暴れていた家具は動きを止め、ベルの部屋が赤黒い光に包まれた。
「そんな……!これは魔術?!言霊を使った魔術ですか?!」
勘のいいベルは自分の置かれた状況をすぐに把握した。押しても引いてもドアが開かない。
「くっ……!やられた。でも、この封印が解けたらヴィンディクタエは必ず復讐を始めますからね。私の生死に関わらず……!」
「あなたを殺しはしないわ。水と食料はドアに穴をあけて提供する。少しの間おとなしくなさい」
そこへ、ちょうどガイがやってきた。
「な……なあんだあ、こりゃあ?ミルドレッド、これはどうしたんだよ?」
「ガイ!丁度良かった!ノコギリでドアに穴をあけてちょうだい!」
ベルは苦々しく唇をかみしめた。
「情けをかけるつもりなの……?やるなら徹底的にしたらどう?私の復讐は止められないわよ」