アルシャインとポールは無言でダイニングキッチンから席を立った。向かう先は、まるで示し合わせたかのように、離れの道場だった。
お互い何も言わない。二人共お互いを殺すつもりで使うべき奇跡のデッキを脳内でシャッフルする。
位置に着くと、アルシャインは軽く肩を竦めてからふっと脱力し、深く息を吐くと、まっすぐポールを見据えて開始の合図をした。
「さあ、始めようか」
それから1秒も待たずポールは先制攻撃を仕掛けた。
「水の神!風の神!雷の神!」
ポールの放った水しぶきに濡れたアルシャインは電撃を受けて感電した。
稲妻の形に火傷を負い、痛みに膝をつく。しかし、すぐさま反撃する。
「重力の神!金属の神!火の神!」
「くっ、金属の神!」
アルシャインは重力を操りポールを壁に叩きつけると、追い打ちに灼熱の金属の破片を差し向けた。しかしこの手は常套手段である。攻撃を読んだポールは金属の盾を創り出してその攻撃を防ぐ。
「水の神!命の神!」
その隙にアルシャインは体の傷を回復する。
「火の神!火の神!水の神!」
ポールは水蒸気爆発でアルシャインを攻撃した。それを重力の神を使い後ろに大きく飛び退って回避するアルシャイン。
「金属の神!火薬の神!……火の神!」
アルシャインは奇跡で爆弾を作り、ポールに向けて投擲した。
ポールはまともに爆発を受けて皮膚に大きな火傷を負った。さらに爆弾の中の金属片で全身にダメージを受けた。
「くああ!この野郎!!」
ポールは傷の治療を後回しにして風の神を大量に呼んだ。中に金属の神を忍ばせて追加ダメージを狙う。
猛烈な突風に襲われてアルシャインが耐える間にポールは怪我の回復を行う。
お互いの実力は互角だった。しかし。
「光の神!」
ポールの放った強烈な光に目を灼かれたアルシャインは目の前が真っ白になり、思わず目を覆って身構えた。
その一瞬の隙をついてポールが仕掛けた金属の神の槍に貫かれて、アルシャインは腹部に大ダメージを受けた。そこに追い打ちするように風の神と雷の神を叩き込む!
アルシャインは電撃が内臓を直撃して意識を失った。
「ふっ、どうやら僕の方が頭の回転の速さでは上回っていたようだな。この程度では死なないでしょう?早く目を覚ませ。勝負はついた」
ポールが金属の槍を消すと、アルシャインは目を覚ました。しかし、受けたダメージが大きすぎて体を動かすことができない。
「これが毎日禁を犯さず修業し続けた奇跡使いの力だ。貴方のように女性にうつつを抜かしている奇跡使いとはわけが違うんですよ。さあ、負けを認めてこの道場を去ってください」
アルシャインはゆっくり目を伏せた。その目蓋の端から一筋の涙が流れた。
(あのひとを守り切れなかった……。僕はここまでなのか。やはり去るべきなのか。僕は弱すぎる。あの人のそばには、もういられない。守り切れない……)
ポールは道場を後にし、テンパランスにこの道場への入門の許可を伺いに向かった。
床に打ち捨てられたアルシャインはゆるゆると天に手を伸ばし、回復の奇跡を使った。ダメージが大きすぎるために、回復には時間がかかってしまったが、傷が治るころには彼自身の心にも決着が付いた。
「何もかもすべて正直に打ち明けよう。そして、この道場を去ろう」
「テンパランス様、お話があります」
ポールは意気揚々とテンパランスに伺いを立てた。二人で応接室に行くと、ポールは笑みすら浮かべてテンパランスに入門の正式な申請をした。いつの間にか履歴書も用意していて、ペンを側に置いて頭を下げる。
「テンパランス様、僕をこの事務所に入門させてください。お願いします」
テンパランスは困ってしまった。入門させるべき人選はいつもアルシャインと相談して決めている。
「アルシャインと相談してみないと一概にはいとは言えないわ」
「彼ならこの事務所を去るそうですよ」
「え!」
ポールの一言にテンパランスは絶句した。あのアルシャインがこの事務所を去る?いったいなぜ?
目を見開いて固まっているテンパランスの様子を見て、ポールは自分に都合のいいように説明した。
「彼は今までテンパランス様に内緒で禁を犯していたそうですよ。そのことを指摘したら彼は罪を認め、この事務所を僕に託して去ると言っていました。あんな人にこの事務所は任せておけません。僕がテンパランス様をお守りします」
「嘘……嘘よ……。ごめんなさい、ポール。やはり彼から話を聞かないことには決められないわ。今日はニコと奇跡の小瓶を作る仕事をしていてください。彼から直接事情を聴いてから判断します」
テンパランスは極力取り乱さないように努めた。
結論を出してもらえなかったポールは不満を覚えたが、テンパランスにも考える時間が必要だろうと思ったので、渋々ニコのいる作業場へ向かった。
「アルシャイン、話があります。私の部屋に来て頂戴」
テンパランスは、ダイニングキッチンで一人茶を飲んで考え込んでいたアルシャインを見つけると、震える声で命令した。この時が来てしまった、と、アルシャインは一度目を伏せ溜息をつくと、テンパランスを見据えて言った。
「僕もお話しなければならないことがあります。テンパランス様」
テンパランスは応接室ではなく、自分の部屋にアルシャインを招き入れた。部屋に鍵をかけると、お互い小テーブルの傍の椅子に腰かけて向かい合った。
「アルシャイン、ポールから聞きました。この事務所を去るとはどういうこと?」
「そうですか。ポールから話は聞いているのですね」
アルシャインは大きくため息を吐いた。何から話せばいいだろう。打ち明けるのが怖くてたまらない。本当のことを言ったらテンパランスは二度と自分に微笑みかけてはくれないだろう。嫌悪と憎悪の目で見られるのは怖い。できることならこの先もずっと、彼女のそばにいたかった。
「テンパランス様。僕は今まで貴女に秘密にしていたことがあります」
「秘密?なんですか?」
「嫌われるのを覚悟で言います。僕は、貴女のことが、好きです。申し訳ありません。僕を、破門してください」
テンパランスは目を大きく見開いて、浅く呼吸を紡いだ。この告白は予想していなかった。まさか、あのアルシャインが、この私を。
「い……いけないわ、アルシャイン。なんてこと言うの。罰が降って奇跡が使えなくなるわよ」
テンパランスは動揺を隠そうと、努めて師匠らしい態度を取ろうとした。
「いいんです。僕はもう耐えられない。僕はここを去ります。あなたのことが好きになった、ほかの奴らみたいに、僕を、破門してください」
「できるわけがないわ、貴方は、今まで私に手を出そうとしなかった。むしろそんな弟子たちから私を守ってくれた。貴方を破門なんてできないわ」
「今まではそうでも、いつまでもというわけにはいかないかもしれません。先ほどポールにそのことを指摘されました。貴女にこんな感情を抱くこと自体が禁忌ではないかと。そして彼と戦いました。結果、僕が負けました。こんな体たらくではあなたを守り続けられない。だから、僕はポールにあなたを守ることを託し、僕はこの事務所を去ろうと」
「そんなことは許しません!!」
テンパランスはかつてないほどの大声で恫喝した。
「テンパランス様?」
「私にはあなたが必要です。今までずっと貴方と一緒にこの事務所を守ってきた。貴方はいつだって私を守ってきた。今更貴方無しでどうやってこの事務所を回せると思っているのですか。師匠として言います。貴方をこの道場から破門はしません。破門してくれだなんて、許しません」
テンパランスの顔が次第に紅潮していく。アルシャインは戸惑った。てっきり嫌われてしまって、汚いものを見るような目で見られて、破門されるものとばかり考えていたアルシャインは、テンパランスの必死な命令に、どう反応していいかわからない。
「テンパランス様……、何故です?僕は、禁を犯しているんです。貴女に想いを寄せてしまった。今まで破門してきた弟子たちと同じなんです。どうして僕をお許しになるんですか?」
真っ赤に紅潮したテンパランスの顔。真っ赤に充血した目から、一滴の涙がこぼれた。
「……私も、貴方のことが好きです。この想いだけで禁を犯しているというなら、私にも罰が下ればいいのだわ」
アルシャインは飛び出すほど目を見開いた。テンパランスを泣かせてしまった。いや、それ以前に、今何と言ったのか。テンパランスもアルシャインのことが好きだと?
「いけません、テンパランス様。貴女も奇跡が使えなくなってしまいます。僕と貴女が奇跡を使えなくなったら、仕事が回せません」
「仕事の心配をしているのですか?フフッ、貴方は自分から破門してくれといったのに、まだこの事務所の心配をしているのですか?」
テンパランスは思わず破顔した。
「あっ……。つい……」
テンパランスは涙をぬぐうと、邪な考えに想いを巡らせた。
「やはり貴方はこの事務所に無くてはならない人だわ。ずっとそばにいて。ねえ、アルシャイン。貴方は私のことが好きだと言ったけれど、私は今までの人達とは受け止め方が違うわ。私も貴方のことが好きです。ならば、共に堕ちましょう。私達には、それしか道はない」
「共に、堕ちる……それしか道はない……」
アルシャインは静かに席を立って、テンパランスに歩み寄った。
テンパランスも立ち上がった。椅子を退け、アルシャインを見上げる。
「テンパランス様」
「アルシャイン」
アルシャインは、テンパランスを掻き抱くと、激しく唇を重ねた。お互いの口の中を交互に蹂躙すると、ヒュッと小さな音がし、二人の頬が切り裂かれた。
「あーあ。ついに罰が降りましたね」
アルシャインは頬の血を拭った。チリチリと傷が熱を持つ。
「構わないわ。むしろ好都合よ。罰が下ったのなら、もう怖いものなんかないわ」
「墜ちるところまで堕ちますか?」
「やってみましょう。あなたと一緒なら、行ける」
アルシャインはテンパランスを横に抱き上げると、ベッドの上に横たえた。そして彼女の上に飛び乗ると、貪るように服を脱がせ、2人は、ひとつになることを選んだ。
お互い何も言わない。二人共お互いを殺すつもりで使うべき奇跡のデッキを脳内でシャッフルする。
位置に着くと、アルシャインは軽く肩を竦めてからふっと脱力し、深く息を吐くと、まっすぐポールを見据えて開始の合図をした。
「さあ、始めようか」
それから1秒も待たずポールは先制攻撃を仕掛けた。
「水の神!風の神!雷の神!」
ポールの放った水しぶきに濡れたアルシャインは電撃を受けて感電した。
稲妻の形に火傷を負い、痛みに膝をつく。しかし、すぐさま反撃する。
「重力の神!金属の神!火の神!」
「くっ、金属の神!」
アルシャインは重力を操りポールを壁に叩きつけると、追い打ちに灼熱の金属の破片を差し向けた。しかしこの手は常套手段である。攻撃を読んだポールは金属の盾を創り出してその攻撃を防ぐ。
「水の神!命の神!」
その隙にアルシャインは体の傷を回復する。
「火の神!火の神!水の神!」
ポールは水蒸気爆発でアルシャインを攻撃した。それを重力の神を使い後ろに大きく飛び退って回避するアルシャイン。
「金属の神!火薬の神!……火の神!」
アルシャインは奇跡で爆弾を作り、ポールに向けて投擲した。
ポールはまともに爆発を受けて皮膚に大きな火傷を負った。さらに爆弾の中の金属片で全身にダメージを受けた。
「くああ!この野郎!!」
ポールは傷の治療を後回しにして風の神を大量に呼んだ。中に金属の神を忍ばせて追加ダメージを狙う。
猛烈な突風に襲われてアルシャインが耐える間にポールは怪我の回復を行う。
お互いの実力は互角だった。しかし。
「光の神!」
ポールの放った強烈な光に目を灼かれたアルシャインは目の前が真っ白になり、思わず目を覆って身構えた。
その一瞬の隙をついてポールが仕掛けた金属の神の槍に貫かれて、アルシャインは腹部に大ダメージを受けた。そこに追い打ちするように風の神と雷の神を叩き込む!
アルシャインは電撃が内臓を直撃して意識を失った。
「ふっ、どうやら僕の方が頭の回転の速さでは上回っていたようだな。この程度では死なないでしょう?早く目を覚ませ。勝負はついた」
ポールが金属の槍を消すと、アルシャインは目を覚ました。しかし、受けたダメージが大きすぎて体を動かすことができない。
「これが毎日禁を犯さず修業し続けた奇跡使いの力だ。貴方のように女性にうつつを抜かしている奇跡使いとはわけが違うんですよ。さあ、負けを認めてこの道場を去ってください」
アルシャインはゆっくり目を伏せた。その目蓋の端から一筋の涙が流れた。
(あのひとを守り切れなかった……。僕はここまでなのか。やはり去るべきなのか。僕は弱すぎる。あの人のそばには、もういられない。守り切れない……)
ポールは道場を後にし、テンパランスにこの道場への入門の許可を伺いに向かった。
床に打ち捨てられたアルシャインはゆるゆると天に手を伸ばし、回復の奇跡を使った。ダメージが大きすぎるために、回復には時間がかかってしまったが、傷が治るころには彼自身の心にも決着が付いた。
「何もかもすべて正直に打ち明けよう。そして、この道場を去ろう」
「テンパランス様、お話があります」
ポールは意気揚々とテンパランスに伺いを立てた。二人で応接室に行くと、ポールは笑みすら浮かべてテンパランスに入門の正式な申請をした。いつの間にか履歴書も用意していて、ペンを側に置いて頭を下げる。
「テンパランス様、僕をこの事務所に入門させてください。お願いします」
テンパランスは困ってしまった。入門させるべき人選はいつもアルシャインと相談して決めている。
「アルシャインと相談してみないと一概にはいとは言えないわ」
「彼ならこの事務所を去るそうですよ」
「え!」
ポールの一言にテンパランスは絶句した。あのアルシャインがこの事務所を去る?いったいなぜ?
目を見開いて固まっているテンパランスの様子を見て、ポールは自分に都合のいいように説明した。
「彼は今までテンパランス様に内緒で禁を犯していたそうですよ。そのことを指摘したら彼は罪を認め、この事務所を僕に託して去ると言っていました。あんな人にこの事務所は任せておけません。僕がテンパランス様をお守りします」
「嘘……嘘よ……。ごめんなさい、ポール。やはり彼から話を聞かないことには決められないわ。今日はニコと奇跡の小瓶を作る仕事をしていてください。彼から直接事情を聴いてから判断します」
テンパランスは極力取り乱さないように努めた。
結論を出してもらえなかったポールは不満を覚えたが、テンパランスにも考える時間が必要だろうと思ったので、渋々ニコのいる作業場へ向かった。
「アルシャイン、話があります。私の部屋に来て頂戴」
テンパランスは、ダイニングキッチンで一人茶を飲んで考え込んでいたアルシャインを見つけると、震える声で命令した。この時が来てしまった、と、アルシャインは一度目を伏せ溜息をつくと、テンパランスを見据えて言った。
「僕もお話しなければならないことがあります。テンパランス様」
テンパランスは応接室ではなく、自分の部屋にアルシャインを招き入れた。部屋に鍵をかけると、お互い小テーブルの傍の椅子に腰かけて向かい合った。
「アルシャイン、ポールから聞きました。この事務所を去るとはどういうこと?」
「そうですか。ポールから話は聞いているのですね」
アルシャインは大きくため息を吐いた。何から話せばいいだろう。打ち明けるのが怖くてたまらない。本当のことを言ったらテンパランスは二度と自分に微笑みかけてはくれないだろう。嫌悪と憎悪の目で見られるのは怖い。できることならこの先もずっと、彼女のそばにいたかった。
「テンパランス様。僕は今まで貴女に秘密にしていたことがあります」
「秘密?なんですか?」
「嫌われるのを覚悟で言います。僕は、貴女のことが、好きです。申し訳ありません。僕を、破門してください」
テンパランスは目を大きく見開いて、浅く呼吸を紡いだ。この告白は予想していなかった。まさか、あのアルシャインが、この私を。
「い……いけないわ、アルシャイン。なんてこと言うの。罰が降って奇跡が使えなくなるわよ」
テンパランスは動揺を隠そうと、努めて師匠らしい態度を取ろうとした。
「いいんです。僕はもう耐えられない。僕はここを去ります。あなたのことが好きになった、ほかの奴らみたいに、僕を、破門してください」
「できるわけがないわ、貴方は、今まで私に手を出そうとしなかった。むしろそんな弟子たちから私を守ってくれた。貴方を破門なんてできないわ」
「今まではそうでも、いつまでもというわけにはいかないかもしれません。先ほどポールにそのことを指摘されました。貴女にこんな感情を抱くこと自体が禁忌ではないかと。そして彼と戦いました。結果、僕が負けました。こんな体たらくではあなたを守り続けられない。だから、僕はポールにあなたを守ることを託し、僕はこの事務所を去ろうと」
「そんなことは許しません!!」
テンパランスはかつてないほどの大声で恫喝した。
「テンパランス様?」
「私にはあなたが必要です。今までずっと貴方と一緒にこの事務所を守ってきた。貴方はいつだって私を守ってきた。今更貴方無しでどうやってこの事務所を回せると思っているのですか。師匠として言います。貴方をこの道場から破門はしません。破門してくれだなんて、許しません」
テンパランスの顔が次第に紅潮していく。アルシャインは戸惑った。てっきり嫌われてしまって、汚いものを見るような目で見られて、破門されるものとばかり考えていたアルシャインは、テンパランスの必死な命令に、どう反応していいかわからない。
「テンパランス様……、何故です?僕は、禁を犯しているんです。貴女に想いを寄せてしまった。今まで破門してきた弟子たちと同じなんです。どうして僕をお許しになるんですか?」
真っ赤に紅潮したテンパランスの顔。真っ赤に充血した目から、一滴の涙がこぼれた。
「……私も、貴方のことが好きです。この想いだけで禁を犯しているというなら、私にも罰が下ればいいのだわ」
アルシャインは飛び出すほど目を見開いた。テンパランスを泣かせてしまった。いや、それ以前に、今何と言ったのか。テンパランスもアルシャインのことが好きだと?
「いけません、テンパランス様。貴女も奇跡が使えなくなってしまいます。僕と貴女が奇跡を使えなくなったら、仕事が回せません」
「仕事の心配をしているのですか?フフッ、貴方は自分から破門してくれといったのに、まだこの事務所の心配をしているのですか?」
テンパランスは思わず破顔した。
「あっ……。つい……」
テンパランスは涙をぬぐうと、邪な考えに想いを巡らせた。
「やはり貴方はこの事務所に無くてはならない人だわ。ずっとそばにいて。ねえ、アルシャイン。貴方は私のことが好きだと言ったけれど、私は今までの人達とは受け止め方が違うわ。私も貴方のことが好きです。ならば、共に堕ちましょう。私達には、それしか道はない」
「共に、堕ちる……それしか道はない……」
アルシャインは静かに席を立って、テンパランスに歩み寄った。
テンパランスも立ち上がった。椅子を退け、アルシャインを見上げる。
「テンパランス様」
「アルシャイン」
アルシャインは、テンパランスを掻き抱くと、激しく唇を重ねた。お互いの口の中を交互に蹂躙すると、ヒュッと小さな音がし、二人の頬が切り裂かれた。
「あーあ。ついに罰が降りましたね」
アルシャインは頬の血を拭った。チリチリと傷が熱を持つ。
「構わないわ。むしろ好都合よ。罰が下ったのなら、もう怖いものなんかないわ」
「墜ちるところまで堕ちますか?」
「やってみましょう。あなたと一緒なら、行ける」
アルシャインはテンパランスを横に抱き上げると、ベッドの上に横たえた。そして彼女の上に飛び乗ると、貪るように服を脱がせ、2人は、ひとつになることを選んだ。