第三十二話 ジェイクの弱点



2024-11-12 19:59:53
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 夕食を終えて後片付けも済ませ、ジェイクがリビングで新聞を読みながらくつろいでいると、アントンがジェイクの座っているソファーに座り、彼を熱っぽく見つめてきた。
「ん?どうした?」
「今日はジェイク、仮面をしていないんですね」
 ジェイクはアントンに対してすっかり心を許し、たまに仮面を外した姿でくつろぐようになっていた。アントンはあれほど頑なに仮面を外さなかったジェイクが素顔をさらすようになったことを喜ぶ。
「ん?ああ、お前の前で仮面してる必要もないしな」
 ふと、アントンが皮膚の露出したジェイクの右頬にキスをした。その不意打ちにジェイクは「ひあっ?!」と声を上げて驚いた。
「急に何すんだよ?!」
「え?キスです。いけませんか?」
 ジェイクは真っ赤になって右頬のキスされた場所を押さえた。実は、ジェイクは普段皮膚が露出した顔の右半分を仮面で覆っているため、右頬を触られることに慣れていなかった。常に仮面で覆われている右頬は、他の皮膚に比べて敏感になっている。そこに不意打ちでキスされたものだから、無意識に感じてしまった。
「あ、あのな、右頬は普段仮面で隠してるから、触られ慣れてないんだよ。敏感だから、急にキスするのはやめろ……」
 それを聞いてアントンはにやりと笑った。
「へえ、ここ、敏感なんですか……」
 すると、アントンはジェイクを押し倒し、右頬にキスの雨を降らせた。執拗に右頬を狙い、唇でついばみ、仕上げにぺろりと舐めあげる。
「や、やめろ馬鹿!弱いんだってば!やめ、ちょっと、やめろって!」
 アントンは気が済むまでジェイクの右頬を攻めると、満足そうに舌なめずりしてジェイクを見下ろした。ジェイクは必死の抵抗と快感のあまり息が上がっている。
「おやおやおや。ジェイクがこんなに|狼狽《うろた》えるなんて珍しいですね。ふふ。ジェイクの弱点見つけちゃいましたね」
 アントンはまるで童話の悪役のように驚いて見せ、にやにやと嗤った。
「……てめー……。……まったく……」
 待てよ、とアントンはハタと手を打った。皮膚の露出した右頬でこんなに敏感なのだとしたら、躰や腕、脚に広がる毛のない皮膚はどうなのだろう?試してみたくなって、アントンはジェイクを押し倒したままジェイクの服を脱がせにかかった。
「あっ、こら、こんなとこでお前、何すんだよ⁉」
「いやあ、ジェイクの躰のほうはどうなのかなって」
「ば、馬鹿……!」
 あれよあれよという間にジェイクは裸に剝かれ、アントンはジェイクの首の右側の皮膚に舌を這わせた。
「ひゃあっ♡」
 ジェイクは思わず声が上ずって、甲高い悲鳴を上げる。アントンの読み通り、ジェイクは躰のほうも、皮膚の露出した部分は弱かった。
 アントンは徐々に下に下がっていき、執拗に毛のない皮膚を舐めた。
「や、やめ、ばか、あっ、はぁん!やめろ、って……!」
 ジェイクは特に腹部に露出が広がっている。腹部は猿族でも敏感な場所だ。アントンがそれを心得ていないわけがなかった。腹部の特に敏感なところに舌を這わせ、集中攻撃する。ジェイクはくすぐったくてたまらず笑い出した。
「あはははは!くすぐったい、やめ、やめろってあははははは!ダメだってそこは!」
「ふふ、ここ弱いでしょう?」
「やめろって馬鹿。怒るぞ!」
 叱られてしまってはこれ以上攻めるのも可哀想だ。アントンは二の腕の内側の皮膚を舐め始めた。ジェイクの躰がビクンと跳ねる。
「うっ、そこは……!はあ、はあ、あっ」
 どうやら二の腕の内側の皮膚は性感帯らしい。ジェイクはハアハアと荒い息遣いで快感に身を委ねた。
「ここ、いいんですか?」
「う……ん……」
 ふと、アントンの腹部に硬い物が当たったので、何かと思ったらジェイク自身が勃っていた。アントンは嬉しくなって、攻める部分を二の腕から|太腿《ふともも》に移した。|内腿《うちもも》の柔らかい部分に舌を這わせると、ジェイクの躰がビクンと跳ね、彼は股の間に尻尾を通して、尻尾で股を隠した。
「な、何だ、そこ……?き、もち、いい……」
 ジェイクがねだるので、アントンは悪戯心が掻き立てられ、わざと毛皮を舐めた。急に太腿の毛皮が逆立てられ、ジェイクは不満をあらわにした。
「なんだよ。毛皮は感じねーよ」
「ふふ、どうしたんです?ハゲを舐められるの嫌がっていたじゃないですか。もっと舐めてほしくなったんですか?」
「う……。意地悪だな、お前」
今度はなかなか皮膚を舐めてくれず、毛皮ばかり舐めるようになったアントンにジェイクは苛立った。早く皮膚を舐めてほしい。毛皮なんかやめてくれ。
すると、不意打ちで内腿の皮膚を舐められた。
「ひゃあっ♡」
 完全に油断していたジェイクの感度は倍以上になっていた。ジェイク自身の先端から先走りが滲む。
「あっ、あっ、あっ♡」
 やっと気持ちいいところを舐めてもらえて、ジェイクは悦んだ。しかし、また意地悪をされて毛皮を舐められる。毛皮を舐められたところは唾液で濡れてひんやりして、気になって仕方ない。そんなところよりも、もっと気持ちいい皮膚の弱いところを舐めてほしい。イライラと耐えていると、また不意打ちで皮膚を舐められる。ジェイクの情緒は搔き乱された。
「な、何だよアントン!もう!意地悪だなあ‼」
 ジェイクの様子が可愛くて面白くてたまらない。アントンはあっはっはと笑いだした。
「可愛いですね、ジェイク」
「うっせー!」
 ジェイクが早く止めを刺してくれとねだるので、アントンはジェイクの中心を咥え、先端を舌で転がした。時々内腿や腹部の皮膚を指先でくすぐってやると、ジェイクは面白いように感じて喘いでみせるので、アントンはジェイクの新しい攻略法が見つかって悦んだ。
「は、ダメだ、いつもより感じる……!イク、イっちまうよ……!」
 「にゃあああああ‼」と一声甲高く鳴き、ジェイクはアントンの口中に精を吐き出した。
「ジェイクは他にどこが弱いんでしょうね?これから毎日ジェイクの躰の性感帯開発しますからね♡」
「お、お前、くそっ、見てろよ。お前もそのうち俺と同じ目に遭わせてやる。俺ばっかりこんなことされるなんて不公平だ……!」
 ジェイクはアントンを恨みがましく睨んだ。

 夜も更けたころ、二人はお互いにシャワーを済ませ、さあ寝ようという段になって、ジェイクはアントンを呼び止めた。
「あ、あのさ、アントン」
「どうしました?」
「こ、今夜、その……いつもの、セックスの時さ、またさっきみたいに、気持ちいいところ舐めてくれないか?」
 アントンは苦笑した。嫌だやめろと言う割にはすっかり味を占めているようだ。
「解りました。ジェイクの好きなとこ、いっぱい舐めてあげますね♡」
 ジェイクは自室に入るなり服を脱ぎ捨て、ベッドに四つん這いになり尻尾をくねらせると、コロンと仰向けに転がり身体をしならせた。その様子を見て、アントンは飼い猫のカールが甘える時にそっくりだなと思わず笑みがこぼれる。ジェイク自身はあくまで人間だと主張するが、こういうところはやはり猫っぽいと思ってしまう。
「早く、アントン。我慢できねえよ。にゃおーん」
 ジェイクはゴロゴロと喉を鳴らし、コロンコロンと媚態を見せてアントンを誘う。
「はいはい。今行きますよ」
 アントンはジェイクに覆いかぶさり、皮膚の露出した右頬に口づけし、唇でついばみ、チロチロと舌先で舐めた。ジェイクはゾクゾクして「にゃあ……」と声を漏らした。そのまま下に下がっていき、首筋を舐めると、やがてお待ちかねの二の腕の内側に来る。
「あああ、そこ、もっと……!」
 アントンに舐められる度、快感に躰が跳ねる。股間のふぐりからは真っ赤な荊の枝が伸びてきた。ジェイクが感じているようなので、アントンは空いた左手でジェイクの左乳首をこねくり回す。すると快感が倍増し、ジェイクはより大きな音を立てて喉を鳴らした。
「お腹はだめなんでしたっけ?」
「お腹舐めたら怒る」
「わかりました。内腿舐めますね」
 アントンはジェイクの足元に下がって、柔らかい内腿に食らいついた。ぺろぺろ舐めるのが煩わしくなったアントンは、ギモーヴのように柔らかい内腿を甘噛みしてジェイクを煽る。ジェイクはくすぐったいような、気持ちいいような、複雑な感触に尻尾をくねらせた。
「は、はああうう……!」
 ジェイクの荊の枝の先端からはとめどなく先走りが滴る。しばらくあぐあぐと甘噛みを続けると、ジェイクの太腿に力が入り、筋肉が蠢いた。
「あっ……イっちまった……。初めてチンコとケツ以外でイっちまった……」
「イったんですか?どんな感じになるんですか?」
「なんか、脚全体が痺れて感覚が敏感になってる……。めっちゃ気持ちいい……」
「もっと舐めましょうか?」
「いや、もう我慢できないから、そろそろ挿れてくれよ……」
 ジェイクが本番をねだるので、アントンは自身に豚の腸をかぶせ、ジェイクの菊門と己自身にオイルを垂らしてジェイクの両脚を持ち上げた。
「え?正常位でやるの?」
「はい、せっかくだから挿れてる間もジェイクの肌をくすぐろうかと」
「え、えええええ⁉」
 毎晩の行為ですっかり緩んだジェイクの菊門はつるりとアントンの竿を迎え入れ、キュッキュッと締まり蠢いた。
「動きますね」
 アントンはゆっくりと腰を動かし、ジェイクの中を楽しむ。次第にアントン自身がムクムクと成長し、硬さ、太さ、長さが増すと、動くたびにジェイクの奥の前立腺を刺激した。
「あっ、ぐう、はぁん♡き、もち、いい……♡」
 ジェイクはゴロゴロと喉を鳴らして快感に身を委ねる。ジェイクの荊の先端は先走りでぬらぬらときらめいた。
 と、アントンは腰を動かしながらジェイクの内腿を指先でくすぐった。先ほど敏感になったばかりのそこは、下半身の神経全体に快感が伝わってジェイクの中まで鋭敏にした。
「はっ!あっ!ああっ!」
「どうです?こうされるとどんな感じします?」
 ジェイクはかあっと顔を真っ赤にして、恥ずかしさのあまり顔を両手で覆った。
「き、気持ちいい。倍気持ちいい。下半身全体が、ビリビリする」
 アントンはそれを聞いて気を良くし、膝の裏の筋やふくらはぎもくすぐってみた。
「はぁん♡ダメ、もう、脚はどこ触られても感じちまうよ」
「毛皮のところはどうですか?」
 今度はジェイクの毛皮を逆撫でして毛羽立たせる。すると、先ほどは感じなかった毛皮の毛根までが性感帯となって、ゾクゾクと快感が走った。
「あっ、毛皮もダメ!感じちまう!ダメだ俺、今めちゃくちゃ敏感になってる……!」
 アントンはジェイクの乱れる様子に興奮し、ジェイクの脚全体を撫でまわしながら腰を打ち付ける勢いを増した。下半身全体が快感の坩堝に落ちたジェイクは喉を鳴らしながらアウアウと喘ぐ。
「あっ、イク、イっちまう……!出してくれアントン、もう、もう許してくれよおお‼」
 ジェイクはハアハアと息遣いを荒くし、荊の先端までせりあがってきた白いマグマを勢いよく吐き出した。アントンはそれを見届けると、快感に身を委ねて達し、ジェイクの中で果てた。
「ジェイク……。今日のジェイク、いつもよりすごくエッチでした」
「う、うるせー。お前が、あんまり責めるから……!」
 賢者タイムでぐったりした二人は、やっとのことで事後処理を済ませ、気絶するように眠りに落ちた。

 翌朝、ジェイクはアントンより早く目を覚まし、まだ寝息を立てているアントンを見つめた。昨夜のことを思い出すと顔が熱くなる。
(あー、仕事、したくねえなあ……)
 そうしているうちにアントンが目を覚まし、ジェイクと目が合うと、「おはようございます、ジェイク」と眠そうに挨拶した。
 ジェイクは今にも起き上がろうとするアントンに、思い切って提案する。
「アントン、今日、店休みにしていいか?」
「え?何故です?具合悪いんですか?」
「いや、元気だけど……仕事したくねえんだ。今日は、一日中お前と一緒に居たい」
 アントンは嬉しくなって肯定しようとして、思い改めた。いくら個人事業主といえど、そんな甘えた態度は良くない。
「ダメですよ、ジェイク。仕事はしましょう?その代わり、今日の仕事が終わったらいつもよりたっぷり愛してあげますから」
「う、やっぱり、ダメ、か……。わかった。仕事する」
 その日は一日中、心ここに在らずといった様子で、惚けたように接客していたジェイクだが、街の中央の時計塔から聞こえる夕暮れの鐘の音が聞こえてくると、弾かれたように立ち上がり、彼はアントンのいる工房へ飛び込んだ。
「アントン!店じまいだ!仕事終わりだ!もういいだろ?!」
 アントンは思わず苦笑する。
「そうですね。よく頑張りましたね、ジェイク」
 ジェイクはアントンの頬に自身の頬を擦り付け、アントンの唇を吸い舌を絡めた。彼はもう一刻も我慢できない様子だった。
「お部屋に行きましょう、ジェイク」
「ああ、もう我慢できねえよ。たっぷり愛してくれるんだろ?早く、早く」

 それからというもの、ジェイクは夜が来るたびにアントンに舐められるようになり、すっかり全身の性感帯を開発されてしまった。そんなある日、ジェイクが街を歩いているとすれ違いざまに「おはようアントンさん!」と声を掛けられた。
「へ?」
 ジェイクをアントンと呼んだその夫人は猫族で、鼻が敏感だった。夫人は目で確認するよりも匂いで人を識別していた。そのためてっきりアントンの匂いのするジェイクをアントンと誤認してしまい、ジェイクの顔を認めると恥ずかしそうに笑ってごまかした。
「あらジェイクだったの?ごめんね、アントンさんの匂いがしたからアントンさんだと思っちゃった」
「え、アントンの匂い……?」
 ジェイクは指摘されてドキッとした。確かめてみたくなって、モモの店に行き、モモに匂いを嗅いでもらった。
「モモ、俺、アントンくさい……?」
「クンクン。ほんとだ。ジェイクの匂いっていうより、アントンの匂いっぽくなってる」
「マジか」
「一緒に暮らしてると匂いが混ざるんじゃないかな?」
「う、うーん……そうか……」
 ジェイクは服の襟をバフバフとあおって、自分の匂いを確かめてみた。ん?この匂いは……。

 ジェイクは店に帰ってくると、工房で作業するアントンの顔を覗き込んだ。
「アントン。俺、アントンくさいって街の人みんなに言われたぞ」
「え、僕くさい……?なんででしょう?毎日シャワー浴びてるのに」
 ジェイクはアントンの両肩を掴み、こちらに向き直させると、息がかかるほど顔を近づけてアントンを睨んだ。
「お前が毎晩ぺろぺろぺろぺろ俺を舐めまくるからお前の匂いが俺に染み付いたんだ‼」
「そんな、まさか」
「まさかじゃねえ‼気になって俺も自分の匂い嗅いでみたが、確かに俺の体中からお前の涎の匂いがする‼俺の匂いを返せ!まったく、毎晩毎晩ぺろぺろしやがって!」
 アントンはジェイクに叱られて、委縮するどころか逆にふつふつと喜びが湧き上がってきた。ジェイクが自分の匂いにまみれて、他人に指摘されるまでになったというのなら、これはもう明らかに所有印を刻んだようなものではないか。よく自分の食べ物に唾を掛けて奪われないようにすることがあるが、ジェイクにアントンの涎の匂いが染みついているのならば、もう誰にも奪われないだろう。
「ということは、ジェイクはもう僕だけのものになったんですね」
「は?なんだそりゃ?」
「毎晩ジェイクに唾つけといてよかったです。ジェイクはもう僕だけのものです」
 ジェイクはアントンのそのセリフの意味するところに気付き、顔を真っ赤にして照れた。
「バ……バ……馬鹿野郎!」
ジェイクはそれ以上何も言えなくなってしまったという。

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